天使と死神とヘミングウェイ

映画『City of Angels』をみました。


ニコラス・ケイジ、メグ・ライアン主演、1998年公開のラブストーリー。

永遠の命を持つ天使のセス(ニコラス・ケイジ)が、
LAで外科医として働くマギー(メグ・ライアン)に心惹かれ、人間になるお話。

天使と言っても、セスたちは常に黒い服に身を包み、人間に死を告げることが役割。
映画化もされた、井坂幸太郎の『死神の精度』を思わせます。
(本作も1987年公開のドイツ映画「ベルリン・天使の詩」のリメイクだそうです。)

くるくると変わるメグ・ライアンの表情はかわいいし、
海で泳ぐシーンなど、静かに流れる映像が美しい。

ラスト10分で、人として限られた時間を生きていくことの尊さを考えさせてくれます。

わたしは結末を全く知らずに映画を見たので、余計にそう思えました。
なので、これからみる方は、Wikipediaなどのあらすじは読まないことをおススメします(笑)


さて。なぜ今から15年前に公開されたこの映画を、今みたのか?


先日友人と食べ物の描写の話になりました。

「ラピュタの目玉焼きとパンを一度食べてみたい!」とか
「ジブリの映画に出てくる食べ物は、ぜんぶおいしそうだ」とか
「村上春樹の小説出てくる食べ物もだよね~村上レシピの本持ってるよ!」
などなど、好き勝手に話していたところ、
「ヘミングウェイも食べ物の描写が深くて。
シティオブエンジェルでは五感を持たない天使が味覚を知るためにヘミングウェイを読むんだよね」と。

ヘミングウェイを読んだことのないわたくし、初耳でした。
そう言えば映画も見たことないなと、DVDを手に取ってみたのです。


天使のセスがヘミングウェイの『移動祝祭日』の一説をマギーに読むシーンがありました。
それは白ワインと共に牡蠣を食べる描写で、邦訳は以下の通り。


「牡蠣には濃厚な海の味わいに加えて微かに金属的な味わいがあったが、
それを白ワインで洗い流すと、海の味わいと汁気に富んだ舌触りしか残らない。
それを味わい、殻の一つ一つから冷たい汁をすすって、
きりっとしたワインの味で洗い流しているうちに、あの脱力感が消えて気分がよくなった。」


牡蠣を食べながら脱力感を感じたことがあったかどうか定かではないのですが。
牡蠣と白ワインだけで、金属的な味わいから気分がよくなるまでの一つのストーリーがあるの、すごいなあ。


近いうちにヘミングウェイにチャレンジしてみようと思います。
原書と邦訳だと、また違うんだろうな。


そうそう、映画公開当時高校生だったわたしは
主題歌「Uninvited」を唄うアラニス・モリセッテが大好きで、収録されたCDアルバムは持っておりました。
久しぶりに聴きましたが、エンディングに流れるアラニスの力強い歌声、よかったです。

梅と谷川俊太郎